何が面倒かというともちろん部品間の配線でありまして、従来の(論理ICやオペアンプ単品を扱うような時代)常識では、部品の足を曲げたり、ニッパで切った足を集めておいてつなぐとか、長さが足りない時はスズメッキ線で引き回すなんてことをしますよね。
スズメッキ線は銅線にスズをメッキしているだけなので、当然交差すると接触のおそれがありますから、できるだけ接触しないように気遣うとか、場合によっては基板の表裏を縫って配線をまたぐなんてことをするわけですが、やればやるほど疲れるじゃないですか。
かといって、リード線は被覆をむくのが面倒(いくら工具を使うとしても)だし、裏で引っ張れば配線山盛りになるし表に出せば美しくない仕上がりで、美観を考えつつ引き回すとかまぁ、ありえな〜い!と叫びたいです。そもそも配線が何本も重なったら、デバッグの際にどれがどこに行っているのかわかったもんでもないわけですし。(色を変える人とかいますか)
もちろん、マイコン初期世代ではワイヤーラッピングなどというある種の工芸もあったわけですが、いずれにせよソケットに多数のワイヤが巻きつきそれがあちこち交差するわけで、やっぱりワイヤ山盛り状態でなおかつその美意識が厳しく問われる世界だったような気がするわけです。
さて、それで何年か前に「TTLでマイコンを自作する」話をTwitter経由で知り合った方から、「ポリウレタン銅線がいいですよ」と言われていたのを、先日ふと立ち寄った秋葉原で思い出したわけです。なんでも、銅線にポリウレタンがコートされているだけなので、ハンダゴテで簡単に溶けて、絶縁されているので重なってもOKという。その方は、ICソケットのピンに引っ掛けるぐらいの細い線でくるくると引き回すような職人芸をお持ちとおっしゃっていたような。
ちょうどいま、Raspberry Piの拡張I/O基板を作っておりまして、スズメッキ線の限界を感じていたところなので、秋月→千石→ヒロセというコースをたどるなかで、最後にヒロセの地下にあるのを見つけた次第。店頭の方いわく、「ネットでヒロセにあるというのをきいて買いに来られる方多いですよ」とのこと。あ、そうなんですか。
ただ、その前に、「ポリウレタン線」と言ったら、「ああ、ニクロム線ですね」と軽く返さえて「え?」と。ニクロム線というと、小学校の理科なんかでモータ巻くのに使った記憶しかなくて、濃紺色の塗膜が鈍く光る銅線というイメージと、店頭にある明るい銅線のギャップに戸惑うわけです。紙やすりで塗料をはがして配線する感じ。面倒だと歯でしごいたりなかして、塗料飲み込んでるけど大丈夫かな―なんて思ったりした少年時代を思い出します。
それはさておき、いや、なんでも、いまどきニクロムを塗布するような線材は作ってないんだそうで、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタンなどが主流になったから、その経緯でそれらを総称して「ニクロム線」と業界では言うらしい。へー。
というわけで買いました。0.4mm, 0.5mm, 0.6mmの3種類。いくらロジック回路とはいえ、あまり細い線は自分で取り回せるか不安だったので、どのへんが使いやすいか確認する意味でこの3種。というのも、極細のポリウレタン線のリールをお尻につけたペンを買って難儀した思い出(しかも1000円以上してすごく損した気分)がありまして。
ポリウレタン銅線 |
追加の配線に使ってみた |
使用感ですが、0.5mmはスズメッキ線ほどハンダの乗りはよくないものの、被覆が熔ければなんとかなる感じ。鉛フリーはんだをつかっているせいもあって作業性に問題があるのかもしれず、一応調温できるハンダゴテで450度設定です。なので、スズメッキ線全廃するには少し慣れが必要な印象でした。特に、短い配線は熔けたハンダに流されたりして、あららと戸惑ったりしました。
というわけで手ハンダする皆様には、ヒロセから通販で買うのをおすすめする次第ですが、名古屋の方なら、第二アメ横ビルのパーツコーナー入ってすぐ左のタケヤ電子でも扱われていましたのでどうぞ。なにより、スズメッキ線より安いのがよいです。貧乏なので10m巻きを買うわけですが、スズメッキ線だと300円ぐらい(ヒロセだと327円とか)のところ、それより100円ぐらい安かったりします。もちろん、リールで買うのもありかと。手のひらサイズで500g(グラム売り)が太さによりますが2000〜3000円ぐらい。
でももはや、Fusion PCB(香港)がある現在、ユニバーサル基板でがんばる必然性はほとんどないですよね。今後は回路図エディタでERCチェック通った基板を発注して作るつもりです。あと手ハンダも厳しいので、皆さんがやられているような、カッティングマシンでステンシル作って表面実装部品を鉄板焼きリフローするメソッドに移行していきたい感じです。