2013年5月27日月曜日

Parallax製品が秋月に本格登場

(追記:2013年5月29日)
この記事で紹介した「Activity Board」とともに、Propeller GCC + SimpleIDEが公式発表されました。いままでPropellerは独自のオブジェクト指向言語SPINでプログラミング剃る必要がありましたが、GCCの移植によりC及びC++に対応しました。また、SimpleIDEはQtベースのマルチプラットフォームな開発環境です。SPIN, C, C++いずれの言語を含むプロジェクトを管理することができます。いままでのPropeller ToolkitやMac版のbstはもう要りません。僕はベータ版公開の頃からSimpleIDEで開発しています。SimpleIDEは一部MITライセンスが含まれますが、基本的にQtと同じオープンソースライセンスで提供されます。Propeller GCCは当然GPLです。

参考:

ついでに、Activity Boardにおすすめのステレオスピーカーも同時発売です。iPhoneとかにもいい感じです。


わたくし先月の商談で両社の通訳ボランティアをつとめたのでちとあれですが、有用な情報だと思うので速報的にお知らせします。

Parallaxは米国カリフォルニアにある従業員70名ほどの小さな会社ですが、社長のお兄さんにあたるChip Gracy氏の独創的なアイディアによるマイコンと、マイコンを利用したプロトタイプや実験・学習用に向いた、気の利いた各種デバイス基板を製造販売でアメリカではとても有名な会社です。

いまのイチオシは本当にユニークな立ち位置にある32bit 8コアプロセッサのPropeller (ver.1)なのですが、事情がありまして(汗)日本語資料が少ないことから(昔、トラ技で一度紹介されたのみ)日本ではあまり認知されてこなかったと思います。唯一、ChipがParallaxを立ち上げるきっかけになった製品「Basic Stamp」が10年以上前から秋月で販売されていたのをご記憶の方があるかという程度かと思います。

「Basic Stamp」はPICを載せた40pin DIP形状の基板で、秋月ファンの方には「PIC Basic」と誤解されることが多いのですが、全然違います。僕自身が使ってきた感触では、Basic Stampのほうがずっと気が効いていて、多様なセンサやアクチュエータを容易に取り扱うことができ、かといって特殊な命令を使うのではない、スマートなバイトコンパイラに仕上がってきたように記憶しています。学習用として大学で用いられてきたのはもちろん、一部の産業用制御機器に組み込まれる形での出荷がかなりあったときいています。アメリカでは日本の「ラジオの製作」誌に似た立ち位置の雑誌「Nuts & Volts」で連載がずっと続いていたこともあって、ホビーで使う人も多かったように思います。

で、秋月が現在扱っているParallax製品はこちらです。

Propellerは現在最も安価なProto BoardとPropStampのみとなっていますが、超音波距離センサの「Ping」の価格を見てください。Arduinoのサイトでも超音波距離センサといえばPingというぐらいメジャーな製品ですが、日本ではこれまで5000円とか出さないと小売で買うことはできませんでしたが、2500円で出ています。これは快挙。

また、3軸ジャイロも4000〜5000円という価格のものでもやすいかな、という感じでしたが、3000円で出ています。これでジャイロをWiiリモコンプラスから取り出していた人にも、手軽にジャイロモジュールとして購入しやすくなったのではないでしょうか。

Propeller搭載基板は、これから続々と面白いものが出てきます。少なくとも、現行製品で少々値は張りますが、Activity Boardは新しい設計だけあって、超高速なADCやXBee端子、マイクロSDスロット、DACなどたいていのプロジェクトの実験に使えそうなものが搭載されています。ご興味のある方は、秋月にお問い合わせもしくはリクエストなどしていただけるとよいのではないでしょうか。これまで個人輸入でしか手に入らなかったあれこれが秋月価格で出てくることが大いに期待されます。

2013年5月1日水曜日

[Review] Dell S2340T 10点マルチタッチディスプレイ pros and cons

デルのWindows 8対応23インチ10点マルチタッチディスプレイS2340Tが職場に届いた。

九十九電機のほかはあまり扱いがないのだそうで、ツクモ特価5万若干超えという、定価からすると破格の値段を出してくれたので、やや厳しい財政だけれど、公費で発注してみた。

箱は内容からすると、かなり大きい。AppleのThunderbolt Displayと同じぐらいでかい。でも、23インチディスプレイなので、なかみはよくある大きさだ。

ツクモにはほかに、LG製やあともう一社、どこだか忘れたけれど国産品があったけれど、タッチ操作を重視して、キーボードなどを置かない使い方、例えば斜めにして画面を机に接するように置くとか、いまのところまだデルのみだそうだけれど、完全に水平にして、テーブルトップとして使えるというところが特色で、「いま選ぶならデル一点買い」とのこと。

また、USB 3.0接続のみで外部ディスプレイとして動き、USB 3.0が4つつながるハブにもなり、Gigabit Etherも出せるし、オーディオ出力と、マイクとWebカメラが内蔵という豪華仕様でもあるので、定価の59,800円でも結構お得感はあるかと思う。

ちなみに額縁はいまどきの液晶ディスプレイとしては、かなり広い。3cmはある。けれども、Windows 8のタッチ操作である、画面の縁からのスワイプができるよう、前面は一枚のガラスでできている。Webカメラ内蔵のため額縁が広いという意味では、AppleのThunderbolt Displayと同じだ。デルのほうがやや角張っていて、当然だけれど27インチと23インチの大きさの差はある。

解像度は1920x1080。23インチなら妥当な解像度だと思う。また、液晶はかなりくっきりしていて、Thunderbolt Displayの2560x1440と比べても、画面が小さいだけで解像感が劣るということはない。

ここまではいいことばかり書いたけれども、ここからはかなり苦言を呈することになる。デルのフォーラムもかなり荒れ模様だったのだが、実際に使おうとすると、いろいろと悩むことになるのは間違いなく、罵詈雑言が集まるのはやむを得ないと思う。

まず、入力端子について。

さきに、USB 3.0で外部ディスプレイとなると書いたが、デルの商品紹介サイトをみても明らかなように、ノートブック型PCの外部ディスプレイとしての利用が前提として設計されているように思う。AppleのThunderbolt DisplayがMacBook Airの外部ディスプレイを想定して、充電用のMagSafe電源ケーブルを具えているのに近いといえる(デルのほうには充電ケーブルはついてないけれども)。つまり、ノートブックPCでタッチディスプレイ以前の機種でも、USB 3.0さえあれば(つまりIvy Bridge以後であれば)Windows 8のタッチインタフェースが存分に使えますよ、というのが売りなんだろうと思う。

大事なことなのでもう一度書くけれど、「USB 3.0での接続」に限られます。USB 2.0のマシンを接続しても、外部ディスプレイにはならない。その場合は、他に用意されている端子に接続する必要があり、USBケーブル一本で、カメラもオーディオも画面出力もタッチ入力も全部OKというわけにはいかない。

で、他の映像入力端子としては、DisplayportとHDMIがある。Apple製品に慣れている人や、WindowsでもUltrabookを使う人が勘違いしないようにもう一度書くけれど、「Displayport」とHDMIだ。Apple製品やUltrabookが具えているのは、「mini Displayport」なので間違えてはいけない。僕はminiでないDisplayportのケーブルを初めて見たのだけれど(添付品)、HDMIとよく似た大きさで、若干厚みがあり、HDMIは台形だけれど、Displayportは片側だけが斜めになっているという違いがある。

したがって、フルサイズのDisplayportを備えたデスクトップマシンならば、添付のケーブルだけで済むけれど、そうでない、例えばDVI出力かHDMIか、という場合はDisplayport-DVI変換アダプタを使うか、HDMI接続するほかない。変換アダプタはデル直販で1,000円ちょっとだけれど、一般に店頭で出ているのは3,000円弱が相場のようだ。

というわけで、きょうはHDMI接続で試すことにした。MacBook 2009年モデルにWindows 8が入っているので、mini Displayport-HDMI変換アダプタ経由でこのディスプレイに接続したことになる。そして、タッチ入力のためにUSBでの接続も必要だ。

Windows 7以後なら、どうやら黙っていても標準デバイスドライバが設定されるようだ。しかし、念のため添付CDからドライバをインストールしたほうがよいかもしれない。ちなみに、添付CDのドライバは、「ディスプレイを接続した状態でなければインストールできない」仕様。模倣品に流用されないようにしているのかどうかわからないけれど、とにかくそういうことなので、先にドライバをインストールしておく、という一般的な手順ではないので気をつけなければならない。

あと、「Dell Display Manager」をインストールするように添付CDのセットアップ画面にはあるが、MacBook 2009モデルではインストールしても動かなかった。学生の比較的新しいWindows PCでは動いて、ディスプレイの輝度等やオーディオ出力の音量など、この製品がもつ機能について、画面横のボタン操作をしなくても、PC上から設定ができるもののようだ。

もうひとつ、「Display Link」というものがインストールできるようになっているのだが、これはまだ何者かわかっていない。学生のノートブックPCでインストールしてみたのだが、特にこれといった変化は見られなかった。

最後に非常に重要な注意点なのだけれど、「HDMI-VGAアダプタは使えない」。いやもしかしたら、ものによっては使えるのかもしれないのだけれど、Raspberry Pi公式のアダプタでは、ディスプレイの電源が入らなかった。なので、アナログ出力しかないPCでは使えない。おそらく、ケーブルからの給電がなければディスプレイが起動しないようになっているのだと思う。

(5月8日追記)--------
Apple周辺のサードパーティ製ケーブルで、mini DisplayPort - DisplayPortケーブルというのがあって、これを使うと、いままで悩ましかった表示の問題が解決できた。HDMIが空いたので、Raspberry PiとかApple TVとかに使えるような気がする。このケーブルは店頭価格2,980もして、Thunderbolt対応を確認しました、とのことだったが、このぐらいよいケーブルでないとまずいようだ。少なくとも、いかにも安物のDVI-DisplayPort変換アダプタは全くだめだった。また、電源もしっかりしていないといけないようで、研究室はタコ足で使うしかない状況なのだが、できるだけUPSに近いテーブルタップに接続しないと、いままで表示できていたマシンの入力でも動かないということがあった。

また、DisplayLinkについては、デルのサポートに教えてもらったのだが、USBオーディオなどが関係するようだ。
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ともあれ、これだけの悩ましいあれこれさえクリアできれば、これはとても楽しいデバイスだ。静電方式のタッチパネルでこれだけの画面サイズになるとセンサになるワイヤーの数もかなりの本数になると思うのだが、全く何の違和感もなくスムーズなタッチ操作ができた。バーチャルキーボードもタブレットより大きく、普通のフルサイズのキーボードのように表示されるので、物理的なキーボードは必ずしも必要ないと感じられた。ただ、日本語入力は、「Google日本語入力は対応していない」ので、MS-IMEを使うことになる。Google IMEのままでは、Input Methodの切り替えにAlt-`という、英語キーボードでおなじみの操作をタッチ画面上でやる必要があり、それで切り替えができても、Windows 8でのGoogle IMEでよくあるトラブルのように、「日本語IM上での半角英数字入力モード」になってしまい、日本語変換に入ることができない。デスクトップであれば、タスクバーの「A」のところを何度かクリックして「あ」に変更するということができるが、バーチャルキーボードではそれができないのでお手上げだ。ここはGoogle Japanの方にがんばっていただいて、バーチャルキーボード対応も進めていただきたいと思う。MS-IMEでは日本語ロケールの場合最初から日本語のバーチャルキーボードなので、普通にタブレットで操作するようにIMの変更や文字種の切り替えができる。面白いのは、記号と数字入力に切り替えると、記号入力バーチャルキーボードの右に数字キー(いわゆる「テンキー」)が現れることで、これはなかなか便利な仕様だと思った。

最後に、水平にして使う場合だが、仕事用途には、打合せのホワイトボードとして使うことだろう。このディスプレイを囲んでそれぞれ思い思いに画面に書き込んでいくことができる。でも、せっかくであればもっと機能的なアプリケーションがあればと思う。One Noteは手書きも含め、いろいろとクリップを貼り付けられるからひとつの候補にはなるだろうけれど、オブジェクトを相手の方向に回転して相手の目の前に移動するなどが簡単にできると面白かろう。

だが、テーブルトップ状態でのキラーアプリケーションは、やはりゲームに尽きる。正直、これは危険過ぎる誘惑だ。研究室がゲーセンになること間違いなしである。

いったんコントロールパネルから画面を縦に設定すれば、ピンボールゲームの臨場感は筆舌に尽くしがたい状態になる。残念なのは、センサーが対応していないので、物理的なTiltができないことぐらいだ。おそらくSurface Proなどでは加速度センサーなど搭載しているだろうから、ゲームさえ対応していれば、ちょっとしたhackで大画面でのTiltができるようになるかもしれない。

また、ボーリングゲームも縦画面がよい。

おなじみマインスイーパーやソリテアもMicrosoftが無償でストアに掲載しているので、これもみんなで画面を囲みながら手を動かして直接操作する楽しさを味わうのに最適だと思う。実際、かなり会話がはずんで楽しかった。

結論としては、Windows 8のタッチ操作は、大画面での水平位置にこそ大きな意義があることに気づくことができた、ということになろうか。かつて「Surface」と言われていた40インチクラスのテーブルトップ装置をMicrosoftは出しているが、コンシューマー向けのWindows 8プラットフォーム上での積極的な展開をもっとやってもいいと思う。ここで望まれるのは、企業向けのミーティング支援アプリだろう。家庭向けにも親子で画面を囲んで会話がはずむ、画面の向きに依存しないアプリ開発が有望だと思う。

SONYが20インチサイズの「テーブルトップPC」を販売しているが、思い切ってもっと大きなサイズに展開してよいのではないかと思うし、リビングのテーブルや床の上で家族や友人が囲んでわいわい楽しめるアプリはもっと開発されてよいと思う。

というわけで、現状ではいろいろと制約のある製品だけれども、なんとか使える状態まで自力で持ち込める人なら、さほどの投資をしなくても未来に夢を感じられるデバイスとして十分もとがとれるものにはなっているように思った。今後、競合他社の奮起を期待したいと思う。