2012年8月15日水曜日

Kindle Previewすごい

作家の藤井大洋さんのSF作品「Gene Mapper」はDRMなしで各種電子書籍フォーマットを用意して販売されている、電子書籍について関心のあるSF者には見逃せない作品だ。

作品は、サイバーパンク的要素の強いハイスピード展開、テクノロジー満載の楽しい内容なのだが、いまサイバーパンクと書いた理由は、みっしりと振られたルビ。もはや古典の「ニューロマンサー」を彷彿とさせるものだったから。また、藤井氏はルビや圏点を意欲的に使い、英語の横倒しセンテンスに漢字かな交じりの日本語ルビ、日本語に英語横倒しルビ、まだ読んでいないがベトナム語に日本語ルビの箇所もあるらしい。当然英数字も増えるので、縦組みの場合は縦中横も頻発することになる。

で、Kobo TouchがWebKitに手を加えたNetFrontでうまく表示するのはともかくとして、さきほど藤井氏のブログエントリで、「Kindle Preview」という著者が実機でどう見えるかをPC上で確認するためのソフトウェアがKindle Touchの縦組み表示に対応していることを知り、Koboブックストアで購入した「Gene Mapper」のKEPUBを読み込ませてみた。

CaribreでMOBIにしなければ読めないかと思ったのだけれども、最初の画面でEPUBも読むと書いてあったので、DRM Freeな氏の作品をそのまま読み込ませたという経緯。

するとやはりMOBIに自動変換するようで、詳細画面を開くと、日本語で「コンパイラ」のバナーが出た後、変換処理の進行状況が現れ、いろいろと警告やエラーメッセージを出しながらもMOBIに変換し、完了したという表示が出た。すると、いままでグレーアウトされていた[OK]ボタンが押せるようになり、目次のページが開いたのだが、とにかく素晴らしい品質の縦組みをする。

本文に入れば、行末の揃えはもちろん禁則や追い込み、ぶら下げなど日本語組版のややこしいところをきちんとクリアしている。もちろん三点ダッシュや連続するダーシもきちんとつながっている(ChromiumやSafariでは、文字の間が少し空いてしまう)。本作品の特徴である大量のルビも、普通に印刷物で読むような、うまい配置をする。ルビの配置についてはもしかすると作家がCSSをうまく書いているためなのかもしれないけれども。

とにかく、この品質であれば、Kindle日本語版には十分期待していいと思う。実機の販売が楽しみだ。

なお、役物が連続するところでの空白はKobo Touchと同じだった。もしかするとKindleもWebKitを使っているのかもしれない。