2012年4月2日月曜日

回路シミュレータQUCS

電子回路の設計や学習に、PC上で回路の実験や測定ができる回路シミュレータは便利だ。それこそ、単純なオームの法則でもさくっと回路図を描いて抵抗値や電圧・電流などを測定できるので、年齢を問わず教材として使えるものだと思う。

業界標準ではSPICEということになっていて、一般的にはリニアテクノロジー社のLTSpiceをダウンロードして使うことになっている。LTSpiceは同社のアナログICなどのデバイスを買ってもらうために無償で配布している(専門家はもっと高級なものを購入するのだろう)。

問題は、Windows専用ということだろう。

そこで、他のOSを使う人で、GUIがほしいよという人はQUCSを使うらしい。Qt3ベースで、GUIのマルチプラットフォーム化を実現している。また、各国語の翻訳データも入っているので、日本語メニューに設定変更できるのも授業で使うにはありがたい。

念のため、2011年秋頃最終更新の0.0.16をダウンロードして入れてみた。Windows用バイナリは同じSourceForgeの別リンク先からとってくる。Macの場合は、MacPortsに入っているので、適当にパッチを流用するなどすれば手動でも入れられるだろう。それより、Qt3が巨大なフレームワークなので、MacPortsではQt3のコンパイルで一仕事になるように思う。

問題は、日本語メニューの表示だ。Windows 7の場合どうなるか、という記述はあまり検索上位に上がってこないようだ。なので、一応書いておくと、
  1. Languageを「Japanese (jp)」にする
  2. その2段上にある「Font (set after reload)」を「Meiryo UI」にする
  3. ScriptをUnicodeにする(と、いいのではないかと思う)
という手順になる。最も注意すべきは、「2.」だ。必ず日本語の「UI」書体を選ばなければならない。間違えて「MS ゴシック」などにすると、グリフのバウンディングボックスが負の値になるのかわからないが、一文字の大きさが巨大な横長になってしまい、もとに戻すのも一苦労だ。運がよければ、言語を「English (en)」にした時点でだいぶましになるが、そのあとで「Default Value」のボタンをクリックして、「Apply」または「OK」をクリックしなければもとに戻せない。レジストリをいじって解決することもできるかもしれないが、探した範囲では設定は見つからなかった。かといって設定ファイルも見当たらなかったし、再インストールしても以前の設定が残るので手が出ない。

なお、QUCSの開発は止まっているというような記述も一部にある。後継プロジェクトはQucsStudioらしい。QUCSにもASCOという最適化ツールやOctave(MatLabのGNU版)スクリプトを用いたシミュレーション結果の視覚化などが同梱されているが、QucsStudioはさらに多数のデバイスやシミュレーション手法、プリント基板設計やガーバーデータ出力などまで含むようで、なんだかたいへんなことになっている。Qt4ベースにも書き換えられている。しかし、GPLのQUCSをベースとしながらソースコードが公開されていないしWindows専用ということで、いまひとつ食指が動かない(起動はしてみたが)。いまのところ言語ファイルも英語とドイツ語のみ(ドイツ語のqmファイルから日本語に翻訳すればいいのかもしれないが)。

それから、コマンドラインでよければ、NGSPICEというプロジェクトもある。各種OSで動く(ただしXが必要なので、WindowsではCygwin環境ということになる)。SPICE3に準拠しているので、本格的にエンジニアリング目的で使うなら、こちらのほうがいいのかもしれない。

ついでに、QUCSはgplEDAというGPLに基づく電子回路設計ツールスイートプロジェクトの一部ということになっていて、プリント基板設計ツールや、Arduino本でおなじみの、ブレッドボード配線図などが描けるFrizingなどがファミリーとなっている。gEDAだけでも、シミュレーション以外の、回路図を描いたりプリント基板設計したり、ガーバーデータ出力したりすることはでき、WindowsでもMacでも動くので、一見の価値はあるかもしれない。