自炊本も含めて、蔵書管理に便利なのがCalibreだ。多数の電子書籍デバイスにも対応していて、DRMの心配がない、例えばパブリックドメインの本などは全部これに入れておき、書誌情報をGoogleやAmazonで検索してくっつけておく、などということもできる。
一方で、出先で自分のCalibreライブラリにアクセスしたいということはあると思う。CalibreはWebサーバとして動作する機能があり、「サーバを起動」すれば、設定したポートでWebサーバとして動作し、設定したパスワードで以後蔵書にアクセスしてダウンロードすることもできる。サーバのページはわりとよくできていて、特に不満はないと思う。
ただ、電子書籍の書誌情報についての規格としてOPDSというのがあって、OPDSカタログを使ってInternet Archiveや青空文庫などと同じようにOPDSから本を選んでダウンロードしたいということもあるだろう。それをどうにかしてくれるのが、calibre2opdsというソフトウェアだ。これはCalibreとは別のプロジェクトで作られていて、作者個人がメンテナンスしている感じだ。当初はDropBoxにCalibreのライブラリごと置いてOPDSカタログもそこに作れば幸せだね、って感じでやっていたようだが、DropBox側の通信量制限にひっかかるケースが続出したようで、OPDSそのものにブロックがかかってしまったようなぼやきが作者のブログに書かれている。
なので以下の記述は、自分でWebサーバを公開できる人に限った話ということになる。
話は簡単で、Calibreのライブラリごと自分のWebサーバに置いて、そこにcalibre2opdsでOPDSカタログを作り、StanzaなどOPDSに対応した読書ソフトウェアに、生成されたindex.xmlへのURIを設定する、ということになる。
i文庫HDなどのように、最初からDropBoxに対応しているアプリで不便を感じていないならば、またGood Reader経由でアプリに渡せばいいじゃないかと思うなら、こんな面倒なことをする必要はない。
しかし、青空文庫やProject Gutenberg、O'Reillyなどと同じ並びで自分の本棚が選べてダウンロードできるというのは、やってみると一味ちがう。StanzaはEPUB2までの対応ということで、縦組みは期待できないが、O'ReillyのPDF版を読むぐらいなら、絶対にStanzaで読むEPUBに切り替えるべきだ。好みの問題といえばそれまでだが、僕は紙の書籍のときから、O'Reillyのへんてこなフォントが大嫌いだった。これで読むしかないから我慢していたのであって、読みにくくて脱落することがとても多かった。でも、Stanzaのデフォルトフォントは、少なくともiOS版に関する限り、十分にオーソドックスな書体が使われていて、たいへん読みやすい。文字のせいで脱落するようなことはなくなった。だから、Stanzaに直接ダウンロードするのを、Webサーバ上でCalibreを動かすことなく(普通はそうだろう)、生成されたインデックスと書籍本体のファイルだけ置けば可能になるというのはとてもよいものだ。日本語も問題なく処理してくれるので、自炊PDFも大丈夫だ。
StanzaはEPUB2とPDF以外にはWordとRTFとHTMLに対応しているんだそうだ。他にmajor ebooks formatsということなんだが、MOBIとかが対応しているのかどうかは試していないのでいまのところわからない。
それから、OPDSは、英文のWikipediaの項目を参照されたい。パブリックドメインの本を提供している複数のサイトのOPDSが掲載されているので、シャーロック・ホームズを原文で読みたいとか、そういった古典へのアクセスに、青空文庫が満足できると思う人なら無償のデジタル本やスキャンされて公開されている古書をこれらOPDSを通してアクセスするのはなかなか快適だ。インライン画像も入っているのでスキャンした本やEPUBで表紙が含まれているならそれが現れるし、書誌情報がついていればそれを確認してからダウンロードすることもできる。ぜひ試してみていただきたい。
そういえば、国会図書館がデジタル化資料(古い官報や古典籍―とはいっても著作権が切れていればいいので1949年、つまり戦後すぐまでの本は入っている)を公開しているのだが、OPDSないよー、とぼやいている人が検索したらたくさん出てきた。ついでなのでここでも「国会図書館のデジタル公開分もOPDS対応してほしい」と要望しておきたい。